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褐色細胞腫のチロシン水酸化酵素阻害剤「デムサー®カプセル」の承認を了承

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厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会は12月3日、小野薬品工業株式会社(本社:大阪府大阪市中央区久太郎町)が、本年4月26日に「褐色細胞腫のカテコールアミン分泌過剰状態の改善及び諸症状の改善」の予定効能・効果適応で承認申請していた、『チロシン水酸化酵素阻害剤「デムサー®カプセル250mg(一般名:メチロシン)」(開発コード/ONO-5371)』について、国内に於ける製造販売承認を了承した。

「デムサー®カプセル250mg(一般名:メチロシン)」は、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」からの開発公募品目で、開発企業の募集が行われた“希少疾病用医薬品(褐色細胞腫に於けるカテコールアミン分泌過剰状態の改善、並びにそれに伴う諸症状の改善)”に指定されています。


褐色細胞腫治療剤デムサーカプセル250mg
褐色細胞腫のカテコールアミン分泌過剰状態の改善、
並びにそれに伴う諸症状の改善
チロシン水酸化酵素阻害剤「デムサー®(Demser®)カプセル250mg」
(一般名:メチロシン/Metyrosine)


褐色細胞腫(Pheochromocytoma)は、副腎髄質や副腎外傍神経節(がいぼうしんけいせつ)などの、【クロム親和性細胞】から発生するカテコールアミン放出性神経内分泌腫瘍で、日本国内の患者数は2,920名※と推計されています。
 〔※厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業「褐色細胞腫の実態調査と診療指針の作成」研究班調査2009年〕

【クロム親和性細胞】とは---内分泌細胞の一種で、副腎髄質などに存在し、神経ホルモンという他の細胞への信号伝達に用いられる化学物質“アドレナリン”と“ノルアドレナリン”を作り出しています。
褐色細胞腫の発生は副腎
褐色細胞腫は副腎から。

褐色細胞腫の多くは良性腫瘍(約90%)で、手術による摘出で治癒しますが、残り約10%(290~310名)の悪性褐色細胞腫では、局所浸潤や骨、肝臓に遠隔転移を伴い、手術適応にならない場合が多く、放射線療法、化学療法による長期的な治療が必要となります。

カテコールアミン※の分泌は、一般的には、持続性又は発作性の高血圧を引き起こします。
褐色細胞腫の患者は、高血圧の危機(収縮期血圧が180mmHgを超え、拡張期圧が120mmHgを超える急性血圧上昇)を発症するリスクが高いのです。
〔※カテコールアミンとは――。神経ホルモンの一種で、神経細胞と他の細胞との間の信号伝達に用いられる化学物質で、ドーパミン・ノルアドレナリン・アドレナリンなど〕

褐色細胞腫のMIBGスキャン画像
褐色細胞腫のMIBGスキャン画像
MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)シンチグラフィスキャン

高血圧性脳症(急性のせん妄(=意識障害)、嗜眠(しみん)、混乱、重度の頭痛など)、肺水腫、心筋虚血、急性腎不全などの重篤な症例(=高血圧の緊急事態)が末期臓器障害と関連している可能性があるものの、褐色細胞腫を有する高血圧症に適応を有する薬剤は、8種ほど出ていますが(交感神経遮断薬=α遮断薬、β遮断薬)、関連する薬剤は、原因が分からない本態性高血圧症の適応を含んでいるため、これら従来の降圧療法には殆ど反応しない場合もあります。


しかしながら、慢性的にカテコールアミンの過剰な分泌が持続する事で、心不全や致死性不整脈などの、心血管関連事象の発症リスクが高まるとされている。
 〔引用抜粋元:©2017 Valeant Pharmaceuticals North America LLC。→http://www.demser.com/ 〕



レギチーン注射液5mg
良性腫瘍の手術の際に利用される血圧調整剤。
一時、製造が中止された、唯一の褐色細胞腫手術前、手術中適応製剤。


褐色細胞腫を切除する際の手術中に、重度の血流不安定性が生じる事がある為、その血圧調整に用いる「レギチーン注射液5mg」の新剤形が本年6月15日に発売されましたが、本剤の旧製品は、国内の患者数が少ない事から、一旦、販売が終了した経緯があります。





「デムサー®(Demser®)カプセル250mg(一般名:メチロシン=Metyrosine)」は、カテコールアミンの産生に関わるチロシン水酸化酵素(Tyrosine hydroxylase)を阻害する事で、褐色細胞腫から過剰に産生・分泌されるカテコールアミンを減少させ、カテコールアミン過剰分泌による症状を軽減します。

そのため、交感神経遮断薬(αβ遮断薬=高血圧症薬)などでは症状が十分にコントロール出来ない患者に対して、症状改善の効果が期待される薬剤です。
国内には、同様の作用機序の承認薬はありません。



尚、承認申請時の用法・用量は、成人、12歳以上の小児には、1日500mgから経口投与する、となっている。
2018年9月現在、米国のみで承認されており、日本は世界で2番目となる。





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