武田薬品工業株式会社(本社:大阪府大阪市)は9月28日、前立腺がん及び閉経前乳がん治療剤として、「リュープリン®」(一般名:リュープロレリン酢酸塩)の24週間持続製剤である「リュープリン®PRO注射用キット22.5mg」について、厚生労働省から製造販売承認を取得したと発表しました。
「リュープリン®」は、武田薬品が創製したLH-RHアゴニスト(黄体形成ホルモン放出ホルモン誘導体)注射用製剤で、脳下垂体に持続的に作用し、脳下垂体の反応性を低下させる事で性ホルモンの産生を抑制します。
▼ LHは、黄体形成ホルモン。
▼ RHは、性腺刺激ホルモン放出ホルモン。
▼ アゴニストとは、生理作用活性薬剤の事。
◎前立腺がんの増進には、男性ホルモン(テストステロン)が関わっている。その為、前立腺がんの治療では、男性ホルモンの精巣からの分泌をブロックする必要がある。
◎同様に閉経前乳がんの場合であれば、卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン)の取り込みを阻害するように働く必要がある。
本剤は、このようにホルモン系に指令を出す、脳下垂体・視床下部に作用して、ホルモン分泌指令をストップさせる事で、癌の増殖を抑制する方法です。
但し、ホルモン依存性乳がんかどうかは、細胞診が必要となります。
「リュープリン®」は前立腺がんや閉経前乳がんなどの、ホルモン依存性疾患の治療剤として、米国、欧州、アジア等(Lupron Depot®)で使用され、日本では4週間持続製剤(3.75mg)、及び12週間持続製剤(11.25mg)が発売されています。
今回新たに製造販売を取得したのは、24週間(6か月)持続製剤で、閉経前乳がん治療剤としては世界初の承認となります。
「リュープリン®PRO注射用キット22.5mg」は、24週に1回投与する製剤です。
尚、既に承認されているリュープロレリン酢酸塩含有製剤は4週毎、12週毎に投与するもので、本剤は、これまでの承認薬と比較して投与間隔が長く、患者の利便性の向上が期待される。
海外では、2015年5月現在、本同剤が承認されている国・地域はなく、但し、米国は日本と有効成分の含有量が異なる24週間持続型製剤(45mg含有)が承認され、またEUは、日本と有効成分含有量は同じで、添加物が異なる24週間持続型製剤が、それぞれ承認されている。
武田薬品では、製剤技術のイノベーションを重ね、米国における最初の承認時(1985年)には1日1回投与であった本剤を、1回の投与で長期間にわたって安定した血中濃度を維持することを可能にしました。現在、日本で販売されているのは、本剤の4週間持続製剤ならびに12週間持続製剤です。
今回、24週間持続製剤である「リュープリン®PRO注射用キット22.5mg」の日本での承認取得は、1回の皮下注射によって長期間に渡り、安定した血中濃度を維持するため、独自のマイクロカプセル製剤技術により徐放性製剤として開発されました。
製品名 : リュープリン® PRO注射用キット22.5mg
一般名 : リュープロレリン酢酸塩
効能・効果 : ○ 前立腺癌 ○ 閉経前乳癌
用法・用量 : 通常、成人には24週に1回リュープロレリン酢酸塩として22.5mgを皮下に投与する。
投与に際しては、注射針を上にしてプランジャーロッドを押して、懸濁用液全量を粉末部に移動させて、泡立てないように注意しながら、十分に懸濁して用いる。
尚、本剤の再審査期間は4年で、この間の投与は全て再審査のための第四相治験データとなる。