厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会は8月28日、バイエル薬品株式会社(本社:大阪府大阪市北区)が申請していた、国指定難病「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」治療薬の「ベンテイビス®吸入液10μg」について製造販売を承認した。
これに基づいてバイエル薬品は、9月から発売の準備を始め、10月下旬~11月上旬に掛けて、準備が整い次第、発売を開始すると発表しました。
新たに発売される「ベンテイビス®吸入液10μg(一般名:イロプロスト)」は、肺血管拡張剤のプロスタグランジンI2(PGI2)誘導体製剤の一つで、新たに開発された合成プロスタサイクリン誘導体を有効成分として「肺動脈性肺高血圧症」を効能・効果とする新医薬品である。
(容器はプラスチックアンプル)
■ 『肺動脈性肺高血圧症(PAH)』は「難治性呼吸器疾患」に認定されている指定難病で、通常言われる動脈とは異なり、全身から心臓に帰った血液を、心臓の右心室から肺に送る血管の事を「肺動脈」と言います。
心臓から出るので動脈と呼ばれ、肺から心臓に戻るのを静脈(肺静脈)と呼びます。
「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」は、心臓から肺に血液を送る肺動脈の末梢(肺の中の小動脈)の内腔が狭くなって血液が通りにくくなり、肺動脈の血圧が異常に高くなる病気です。
残念ながら、何故このような病気が起こるのか、原因は解明されていません。
現在、ゲノム解析が行われており、遺伝子変異が見つかる事が期待されるほか、遺伝性PAHや食欲抑制薬の服用による発症、膠原病なども疑われていますが、特定には至っていません。
そのため有効な治療法は確立されていませんが、対症療法として肺血管拡張療法で一定の効果が期待できるようになりましたが、いまだ予後不良な疾患となっています。
但し、極めて希有な疾患で、発症頻度は人口100万人あたり1~2人とされています。また比較的女性に多いのも特徴です。
「ベンテイビス®吸入液10μg」は、プロスタグランジンI2(PGI2)誘導体と同様に血管拡張作用及び血小板凝集抑制作用を示すことで病態を改善します。
同様の効能・効果を持つPGI2誘導体の類薬には、エポプロステノールナトリウム(一般名:静注用フローラン)、トレプロスチニル(一般名:トレプロスト注射液)、ベラプロストナトリウム(一般名:ドルナー錠)があり、「ベンテイビス®吸入液」は新たな治療の選択肢となる。
海外では、2015年6月現在、70以上の国・地域で承認されている。
本剤の薬理作用は、バイエルヘルスケア社が開発した合成プロスタサイクリン誘導体が、プロスタサイクリン受容体に結合し、血管拡張作用、及び血小板凝集抑制作用を有する。
また本剤の形態が、携帯型ネブライザー(吸入器)を用いる事で、患者ご自身で吸入することが可能となり、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の病態を改善します。
尚、「ベンテイビス®吸入液10μg」の再審査期間は8年となっている。