武田薬品工業株式会社(本社:大阪府大阪市中央区)は11月26日、多発性硬化症治療剤「コパキソン®皮下注20mgシリンジ」(一般名:グラチラマー酢酸塩)を、日本国内で発売したと発表した。
本剤は2009年3月、厚生労働省より希少疾病用医薬品に指定され、2010年5月には厚生労働省から「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬」として、武田薬品が開発要請を受けた。
その後、2013年3月、武田薬品は本剤の日本における製品化に関するライセンス契約を、グラチラマー酢酸塩を開発したイスラエルのTeva社(Teva Pharmaceutical Industries Ltd.)と締結。
契約に基づき、2015年9月28日に製造販売承認を取得し、11月26日に薬価収載された。
多発性硬化症(MS=Multiple Sclerosis)は、脳や脊髄に多発性の硬い病巣が見られる病気であり、中枢神経線維を覆っている髄鞘(ずいしょう)が障害を起こす自己免疫疾患で、厚生労働省の特定疾患(=神経難病)に指定されています。
この病変は、大脳、脳幹(のうかん)、小脳、脊髄や視神経などの中枢神経に、規則性もなく再発と寛解(かんかい)を繰り返します。
一般的な症状として、視覚および眼球運動異常、感覚異常、筋力低下、痙縮(けいしゅく)、排尿不全、認知機能障害などが見られ、(1)発病初期から慢性進行性の経過をたどる一次進行型、(2)再発・寛解を繰り返す再発寛解型、(3)再発・寛解を経て進行型に転ずる二次進行型があり、患者の8割以上が再発寛解型(2)に分類されます。
多発性硬化症の日本における罹患者(りかんしゃ)数は約18,000人であり、発症する年齢は、若年成人といわれる20~30代が多く、また男性に比べて女性に多く発症し、近年、更に増加傾向にあります。
発症のきっかけや原因は不明ですが、何らかのウイルスの感染を契機に、髄鞘に対する異常な免疫反応が起こり、髄鞘を傷つけてしまう自己免疫反応的な原因で、脱髄を起こすと考えられていますが、詳細は分かっていません。
多発性硬化症を診断するための特異的な検査はありませんが、MRIによる脳の撮影や腰椎穿刺(ようついせんし=針を刺す)による脳脊髄液検査が、診断に重要な情報を与えてくれます。
「コパキソン®皮下注20mgシリンジ」は、多発性硬化症の再発を予防する1日1回20mgを皮下投与注射剤です。
効能・効果は多発性硬化症の再発予防で、作用機序は、自己免疫反応を調整することで中枢神経における炎症を抑制し、多発性硬化症の再発を予防します。