ジェンザイム・ジャパン株式会社(本社:東京都新宿区西新宿)は12月24日、甲状腺がんの中で、発症頻度が低い希少がんの「甲状腺髄様がん」の治療薬として、抗悪性腫瘍薬「カプレルサ錠100mg(一般名:バンデタニブ)」を発売したと発表した。
適応は「根治切除不能な甲状腺髄様がん」で、1日1回300mgを経口投与する。
甲状腺髄様がんは、甲状腺がんの内の1~2%程度の頻度で発症し、治療の第一選択肢は手術だが、進行した場合の治療の選択肢が限られ、悪性度の高い癌である。
日本での甲状腺がんの全体の総患者数は1万3000~2万9000人と推定され、甲状腺がんの病態は、全体の約92~85%を占める乳頭がん、次いで約3~10%の濾胞(ろほう)がん、1~2%程度の髄様がん、1%前後の未分化がんと、大きく4つに分類されます。
甲状腺がんは女性に起こりやすく、男女比は人口10万人に対して3.4:10.8で、死亡リスクは、0.8:1.7となっています。
甲状腺がんの内、最も多い乳頭がんは非常にゆっくりと進行し、早期の発見では治療経過が良好で死亡率は低いが、術後10~20年経過して再発する事もあり、長期経過観察が必要。濾胞がんも進行はゆっくりです。
未分化がんは症状の進行が速く、肺や肝臓への転移を起こしやすい、悪性度の高いがんで、高齢者に多く発症します。
甲状腺髄様がんは、乳頭がんや濾胞がんと異なり、カルシトニンというホルモンを分泌するC細胞に発症し、乳頭がんや濾胞がんはヨードを取り込む性質がある為、アイソトープ療法が可能ですが、髄様がんではこの性質が無く、放射性ヨード(ヨウ素)によるアイソトープ療法が出来ません。
このように甲状腺髄様がんと甲状腺未分化がんは、他の甲状腺がんに比べ進行・転移が早く、外科的全摘出手術や放射性ヨウ素療法など、根治切除不能で、標準治療が存在しない事から、新たな治療薬の開発・承認が望まれていました。
今回承認された「カプレルサ錠100mg(一般名:バンデタニブ)」は、甲状腺がんの発症と病勢の進行において重要なシグナル伝達経路である、VEGFR-2チロシンキナーゼ(血管内皮増殖因子受容体2)を介した血管新生を抑制するとともに、上皮増殖因子受容体(EGFR)とRearranged during Transfection(RET)の各チロシンキナーゼを標的とする、マルチキナーゼ阻害薬である。
マルチキナーゼ阻害薬は、がん細胞の血管新生を抑制する事で腫瘍細胞の増殖を抑え、病態進行を遅らせる事が期待される抗悪性腫瘍薬である。
マルチキナーゼ阻害薬に関しては、甲状腺癌治療で既に、分化型甲状腺癌(乳頭がんと濾胞がん)に対し「ソラフェニブ(商品名ネクサバール)」が、また根治切除不能な甲状腺癌に対し「レンバチニブ(商品名レンビマ)」が使用されているが、未分化がんは発症機序が異なるため、効果が無かった。
「カプレルサ錠100mg(一般名:バンデタニブ)」は、これまでの国内第1/2相臨床試験、及び海外での第3相臨床試験の結果、ほとんどの患者において腫瘍の縮小が認められている。
投与は1回300mgを1日1回。薬価は100mg/1錠7836.40円。
適応は「根治切除不能な甲状腺髄様癌」で、尚、投与中に副作用により減量する場合には1回200mg、その後必要であれば100mgに減量する事となっている。
製造販売元はアストラゼネカで、販売はジェンザイムが行う。