バイエル薬品株式会社社(本社:大阪市北区梅田)は5月16日、日本で初めての吸入型肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療薬「ベンテイビス®吸入液 10μg」(一般名:イロプロスト)の発売を開始したと発表した。
「ベンテイビス®吸入液 10μg」は、日本で初めての吸入型の肺血管拡張剤で、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」での継続的な協議を経て、2010年に厚生労働省より正式に開発要請を受け開発された製品です。
肺高血圧症(PH)は、進行性で生命を脅かす深刻な心肺疾患であり、肺動脈圧が正常値よりも高くなり、心不全や死に至る場合のある疾患で、運動能力を著しく低下させ、患者の生活を制限するに至ります。一般的な症状は、息切れ、疲労、めまい、失神などで、いずれも労働作業により悪化します。
肺は、呼吸によって酸素を体内(気管支)に取り入れ、肺動脈が全身から回収した不要な二酸化炭素を"ガス交換"によって体外に除去し、新鮮な酸素を心臓を介して肺静脈中に送り出します。
肺高血圧症の症状は、固有の特徴的な症状が無いため、診断が遅れることが多く、治療開始の遅れは生命予後に悪影響を及ぼす為、早期診断と正確な肺高血圧症タイプの確認が非常に重要です。
肺高血圧症には5種類あり、その内の肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、血管収縮によって肺動脈圧が大きく上昇し、心不全や死に至る可能性がある進行性の疾患です。
肺動脈性肺高血圧症そのものは希少な疾患であり、その患者数は100万人当たり15~52人。2014年度における総登録患者数は2,946名で、多くの場合、原因は明らかではありません。
この10年に渡って、既に幾つかの治療方法が提供されているにも関わらず、患者の死亡率は、診断から1年で15%、3年で32%と依然として高くなっています。
日本においては、特定疾患治療研究事業の対象疾患に指定されていて、新しい治療の選択肢が待ち望まれています。
「ベンテイビス®」は、バイエルヘルスケア社(本部:ドイツ,レーバークーゼン)が開発した合成プロスタサイクリン誘導体で、狭くなった肺血管を拡張し、心臓から多くの血液を肺に送り込むようにする事で、肺動脈圧を低下させ、全身への酸素供給を改善して、心臓への負担を減少させる薬剤です。
新たに承認された「携帯型ネブライザ(吸入器)」を用いる事で、エアロゾル化した薬剤を直接、肺血管に到達させ、肺動脈圧を低下させる事が出来ます。
ネブライザ(吸入器)が携帯型であるため、患者自ら吸入する事が出来ると言うメリットがあり、2003年の発売以来、世界各国で広く使用され、長期の安全性と有効性が確認されています。
製品概要;
販売名: ベンテイビス®吸入液 10μg(マイクログラム)
一般名: イロプロスト
効能・効果: 肺動脈性肺高血圧症
用法・用量: 通常、成人にはイロプロストとして初回は1回2.5μgをネブライザを用いて吸入し、忍容性を確認した上で2回目以降は1回5.0μgに増量して1日6~9回吸入する。1回5.0μgに忍容性がない場合には、1回2.5μgに減量する。
製造販売承認日: 2015年9月28日
販売開始日: 2016年5月16日
薬価: 2,386.50円