「リグロス®」は、遺伝子組換え型ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF※)を有効成分とする、世界初の歯周組織再生医薬品製剤で、褥瘡(じょくそう=組織が壊死)や皮膚潰瘍に用いるフィブラストスプレーの主成分であるトラフェルミンが、表皮形成などを促す作用によって、手術により歯肉を剥離し、歯根、歯槽骨を露出させ、処置が必要な重度の『歯周病』に用いる。
※bFGF(basic fibroblast growth factor; 塩基性線維芽細胞成長因子)とは…
【元来、生体内に存在し、細胞の増殖や分化の調節を行っているタンパク質の一種。 皮膚、血管、骨、軟骨と言った、様々な組織の形成に強く関与している、細胞成長因子の1つで、種々の細胞の増殖作用、及び血管新生作用を持つ事から、再生医療の分野で期待されている物の1つである】
歯周炎、又は歯周病は、主に歯と歯ぐきの間に付着した"プラーク"や"歯石"によって生じる慢性炎症疾患です。
症状が進むと、炎症の進行と共に、歯を支えている歯槽骨などの歯周組織が徐々に破壊され、これをそのまま放置すると最終的には抜歯に至る事があります。
進行した歯周炎(歯周病)では、歯周組織の破壊を阻止する為に、「フラップ手術(歯肉剥離掻爬(そうは)手術)」と呼ばれる外科手術が実施される場合があります。
この手術は、メスで歯肉(歯ぐき)を切開して、歯肉を歯槽骨から剥離し、歯根及び歯槽骨を露出させたのち、"プラーク"や"歯石"、及び炎症によりダメージを受けた"歯肉などの組織"を取り除いた後、剥離した歯肉を元の状態に戻し、縫合するものです。
悪化した歯周炎(歯周病)で、歯ぐきを形成する歯槽骨が欠損した場合、「フラップ手術」では病気の進行は止められても、骨は失われたままの為、歯周組織本来の構造と機能は復元されませんでした。
これまで様々な方法で歯周組織の再生が試みられて来ましたが、骨の欠損部の歯槽骨の形成スピードより歯肉の増殖スビートの方が早く、本来再生される組織に歯肉が侵入するため、決め手となる有効な治療法が見いだせませんでした。
科研製薬では、約1,000名の「フラップ手術」を施行する歯周炎患者を対象とした、複数の臨床試験を日本国内で実施。
その結果、手術時に「リグロス®」を歯槽骨欠損部に塗布する事で、歯槽骨の増加など歯周組織再生に対する有効性・安全性が確認され、これ受けて2015年10月に製造販売承認申請を行っていた。
「リグロス®歯科用液キット600μg/1200μg」は、手術時に歯槽骨の欠損部に塗布し(単回使用)、縫合した後に、内部で歯周組織の欠損部にある幹細胞の増殖が促される事で、歯周組織の再生を促進すると考えられている薬剤です。
◎新投与経路医薬品。再審査期間6年。
【承認内容の概要】
【販売名】:リグロス®歯科用液キット600µg、歯科用液キット1200µg
【一般名】:トラフェルミン(遺伝子組換え)
【効能・効果】:歯周炎による歯槽骨の欠損
【効能・効果に関連する使用上の注意】
1. 本剤は、歯周ポケットの深さが 4mm以上、骨欠損の深さが3mm以上の垂直性骨欠損がある場合に使用すること。
2. 本剤は、インプラント治療に関する有効性及び安全性は確立していない。
【用法・用量】:歯肉剥離掻爬手術時に歯槽骨欠損部を満たす量を塗布する。
【用法・用量に関連する使用上の注意】
本剤の使用にあたっては[臨床成績]の項を参照し適切な量を用いること。
尚、「リグロス®」の有効成分である「トラフェルミン(遺伝子組換え)」は、遺伝子組換え技術により製造したヒトbFGFで、2001年6月に褥瘡(じょくそう)・皮膚潰瘍治療剤「フィブラスト®スプレー」として、科研製薬より発売されている。